いつまでも終わりがない感染症との戦いが続く日々の中、
「自分の身は自分で守らないといけない」
と感じている方は多いのではないでしょうか。
感染症や病気は、いくら予防しても防ぎきれないこともあります。
しかし、体にトラブルが起こってしまったとしても、自分自身の力で治す力を高めることがとても大切です。
現代は食事の偏りや睡眠時間の減少などで、免疫力が低下する生活になりがちです。
せっかく持っている「病気と闘う力」を十分に発揮できないのは、とても残念なことです。
病気にかからなくなる「スーパーフード」はありません。
ただし、普段食べている食事をどのように選び、食べていくかによって自分が持つ「免疫力」を活かして病気と戦うことができます。
今回は、自分の免疫力を最大限活かすためにどのように食事をしたらよいのか、考えてみましょう。
免疫力は「腸内環境」と「体温管理」が大切
人間が持つ免疫力は、実はとても頼もしい存在です。
しっかり免疫力が働く環境を作っておくと、感染症にかかりにくくなるだけでなく、がんなどの病気を発症するリスクもおさえることができます。
ここでは、人間が持つ免疫力とそれを最大限生かすためにどんな環境を整えることが必要なのか、考えてみましょう。
免疫力は人間の最大の防衛能力!
免疫力とは、細菌やウイルスなどの病原体やがんなどの病気から、体を守る最大の防御能力のことです。
私たちの周りには、目に見えない病原体が多数存在しており、体に入り込むことで病気にかかります。
病原体の感染から体を守る仕組みが「免疫」です。
目や鼻・喉・腸といった粘膜組織、そして体の中でも免疫システムが24時間働くことで病原体の侵入を常に防いでいます。
免疫には「防御」と「攻撃」の二つの役割があります。
免疫の「攻撃」と「防御」の仕組みがしっかり働いていると、さまざまな病気や病原体から自分の力で防ぐことができます。
また、免疫力が低下している状態が続くと、普段はたいしたことがない感染症などでも悪化してしまうことがあります。
例えば、インフルエンザなどのような身近な感染症でも、免疫力が低下している場合には症状が悪化し、入院が必要となるほど重症化することもあるのです。
免疫力は年齢にも大きく関係します。
一般的に免疫力は思春期にピークとなり、20歳を過ぎると少しずつ低下していきます。
一般的に乳幼児や高齢者・基礎疾患を持つ方が感染症などで重症化しやすいのは、この免疫機能がもともと低くなりがちなためです。
年齢などにより持っている免疫力の差はありますが、自分がもっている免疫力を落とさず最大限に活かすことができることが、健康管理にはとても大切になります。
免疫力を高めるポイントは「腸内環境」にアリ
腸には免疫力の60~70%が備わっており、免疫力を高めるポイントは腸内環境にあります。
腸内環境を整えることで、免疫力の低下を防ぐことができるのです。
食べ物を消化・吸収・排泄する役割を持つ「腸」は、食べ物についたさまざまな病原菌やウイルスと日々戦う必要があります。
そのため、腸には強力な「免疫力」が備わっています。
腸内環境が乱れていると腸に備わった免疫力も低下し、感染症や食中毒を引き起こしやすくなってしまいます。
普段から腸内環境を意識した食事や生活を心がけることで、腸内に備わる免疫機能を最大限に活かし、病気にかかりにくい体を維持することができるのです。
平熱の体温が低いと、免疫力も低下する
私たちの体の「体温」は免疫力にとても影響しており、平熱の体温が低いと免疫力も低下してしまいます。
体温と免疫はとても関係があり、「体温が1度下がると免疫力は30%落ちる」といわれています。
平熱が常に低めの人は、免疫力が低くなっている可能性があるのです。
免疫力の維持のためには、自分の平熱をしっかり知り、体温が低い体にならないようにしていくことが大切です。
逆に、体温を上げることで、免疫力も上げることができます。
<体温が上がると免疫力が上がる理由>
・血流が良くなる
・酵素が活性化する
血液の成分「白血球」は、免疫に関係する細胞が集まっています。
血流が良くなることで、免疫の機能を持つ白血球が体のすみずみにまでめぐり、免疫力を発揮することができるのです。
また、「酵素」は食べ物の消化吸収や細胞の新陳代謝などで活躍するもので、生きていくために欠かせないものです。
この酵素の活性が一番高まるのは、体温が37度前後と言われているため、体温が高めの人の方が酵素の活性が良くなり免疫力も高まります。
一見関係なさそうな体温と免疫力の関係ですが、平熱の体温が適度に高い体を作っていくことが免疫力UPにつながるのです。
免疫力を効果的に高める食事
免疫力を高めるためには、食事が大きく関わってきます。
毎日3回食べる「食事の内容」と「食べ方」に気をつけることが、確実に免疫力を高め、維持していくことにつながります。
ここでは、どんな食事をすれば免疫力を高めることができるのか、考えてみましょう。
基本は「バランスの良い食事」!
免疫力を高めるために一番大切なことは、「バランスの良い食事」を心がけることです。
私たちの体はさまざまな栄養素からできており、健康を維持するためには主に「主食」「主菜」「副菜」に分けられる食品を、バランスよく毎食食べることが大切です。
望ましい食事のバランスは、「食事バランスガイド」(厚生労働省)が参考になります。
<厚生労働省 食事バランスガイド>
健康に良い、病気に良いという宣伝で1つの食品やサプリメントに飛びつきがちですが、病気や感染症にならない「スーパーフード」は存在しません。
しっかりバランスの良い食事をとって体を維持し、その時の体調や環境によって必要な食べ物を増やしたり減らしたりして調整していくことが大切になります。
自分の体が一番調子の良い状態を維持することが、免疫力を上げることには欠かせません。
体のすみずみまで足りない栄養が無いように、バランスの良い食事を心がけましょう。
腸内環境を整える食事のポイント
免疫力を高めるために「腸内環境」を整えるためには、おさえるべき食事のポイントがあります。
<腸内環境を整える食事のポイント>
1.「善玉菌」と呼ばれる腸を整える腸内細菌を増やす
2.腸の掃除をして良好な排便を促すために必要な「不溶性食物繊維」を意識して摂取する
腸内環境を整えるためには、「腸内フローラ」と呼ばれる腸内細菌を良好に保つ必要があります。
腸内細菌が良好な状況とは、善玉菌>悪玉菌の環境になっていることです。
つまり、善玉菌をいかに増やす環境を整えるかということが大切になります。
善玉菌を増やすために意識するべき食事のコツは2つあります。
また、不必要な悪玉菌を押し出し、善玉菌を優位にするためには腸の掃除をする「不溶性食物繊維」を多くとることも必要です。
不溶性食物繊維が多く含まれる食品: 野菜類・キノコ類など
不溶性食物繊維は、便のカサを増して腸を刺激することで、良好な排便を促します。
私たち日本人は、野菜の摂取量が年々減っていると言われています。
健康を維持するために必要な野菜の量は、1人1日あたり350g以上です。
この量は、意識して食べないととることができません。
普段の食事に野菜の料理を1つ加えることで、野菜の摂取量を格段に増やすことができます。
料理を作る時だけでなく、外食やコンビニなどで食事を購入する際も、意識して野菜のおかずをプラスワンすることを心がけましょう。
栄養は食べ物から「多品目」とることが効果的
免疫力を高めるためには、意識してとりたい栄養素を含む食品を中心に、食べ物から多品目意識してとるようにすることが効果的です。
免疫力を高めるために、特に必要な栄養素は、たんぱく質や抗酸化作用があるビタミンです。
<意識してとりたい栄養素>
・たんぱく質・・免疫細胞や筋肉を作る。
・ビタミンA・C・E・・・抗酸化作用※がある。
※抗酸化作用とは
細胞や組織にダメージを与える活性酸素を撃退する働きをして、免疫力の働きを高める
栄養素を効率よくとりたいと思うと、サプリメントなどに頼りがちになる傾向がありますが、必要な栄養素は毎日の食事でとるのが本来の形です。
さまざまなサプリメントに手を伸ばすより、多種多様な食品を一日の中でとるようにすることで、サプリメント以上に多様な栄養素を摂取することができます。
栄養素は単体で摂取するよりも、組み合わせて摂取することで吸収率が上がったり、1日の中で分割してとったほうが効率よく吸収できるなど、特徴がさまざまです。
多種多様な食品を使って食事をすることで、自然と効率よく栄養素を吸収できる環境に整います。
ただ、たくさんの食材を使って調理することは大変なものです。
多品目の食品を継続してとるためには、コツがあります。
使ったことが無い食品や、きんぴらごぼうなどの手がかかるおかずは、忙しい家庭の調理のなかでは敬遠されがちです。
そんなときこそ、上手にお惣菜を利用することで無理なくおかずの幅を広げることができます。
外食が多くなりがちな昼食は、野菜の摂取が少なくなる傾向があります。
サラダや小鉢をプラス1することで、一日の野菜の摂取量に近づけることができます。
考えるのが面倒なメインのおかずの調理は、ローテーション化がおススメです。
肉・魚・卵・大豆(大豆製品)を順番に食べるようにすることで、自然に多様な食品の摂取につながります。
さらに、肉や魚の種類もローテーション化すると、さらに多様化に近づきます。
いろいろな食材をとることが、多くの栄養素を摂ることにつながることを意識して、無理なく免疫力のアップをにつなげましょう。
身の回りにあるものをうまく利用して、無理なく多品目の食材をとる意識を持つことが大切ですね!
平熱の体温を上げる食事の工夫
免疫力をきちんと機能させるためには、平熱の体温が低くならないようにしっかり食事をする必要があります。
体温と食事には、密接なつながりがあります。
<食事と体温が関連する理由>
・熱を生み出すには「糖質」が必要
・熱産生の器官「筋肉」を作るための「たんぱく質」が不可欠
・熱産生のサポートにさまざまなビタミンやミネラル類が関わっている
最近問題になっている過度なダイエットや朝食の欠食をしている人は、体温が低い傾向があります。
体温が低い状態でいることは、免疫機能を含めた体の各器官が正常に働かず、体や脳に大きな影響を与えてしまいます。
朝・昼・夜の3回しっかりバランスの良い食事をすることで、熱を生み出す供給源を体に都度とりこみ、筋肉が正常に働くようになります。
また、体を温める食品を食事に取り入れることも有効です。
<体を温める食品>
・根菜類(ごぼう・蓮根など)、かぼちゃ、香味野菜(ネギ・生姜・ニンニク・ニラなど)
夏は体を冷やす野菜が、冬は体を温める野菜が多く旬を迎えます。
体が冷えやすい冬は、旬の食べ物を意識すると、自然と体を温める食材の摂取につながります。
体を温める食品を意識してとりいれながら、3食バランスよくしっかり食べ、平熱の体温を少しでもあげられるようにしていきましょう。
免疫力を高める生活習慣とは
免疫力は食事だけ改善しても、高めることはできません。
免疫力は体のしくみの1つのため、年齢のほか、睡眠や運動・ストレスなどの生活習慣が大きく関わっています。
ここでは、免疫力を高めるために食事と合わせて確認したい生活習慣について、考えてみましょう。
睡眠時間をしっかりとる
免疫機能をしっかり機能させるためには、睡眠時間をしっかりとることが必要です。
睡眠時間は美容の面でよく取り上げられますが、免疫機能にも大きな影響があります。
e-ヘルスネット(厚生労働省ホームページ)によると、日本人の睡眠時間は他国に比べてとても短く、特に子ども・就労者(特に女性)は慢性的な睡眠不足に陥っています。
また、睡眠不足は生活習慣病や精神疾患にも大きく関連していると言われており、必要な睡眠をしっかりとることは体と心の健康に生活するためには欠かせないことです。
個人差はありますが、必要な睡眠時間は一般的に6~8時間と言われており、10代半ばをピークに必要な睡眠の量は加齢により減っていきます。
睡眠時間は質にも左右されるため、朝スッキリ起きることができれば、その人にとっての理想的な睡眠時間となります。
大切なことは、睡眠の質を高めるためにどんな生活を送るかです。
・規則正しい生活・・早寝早起き、3食しっかり食べる
・適度な運動・・程よく体が疲れる運動を定期的に
・快眠に適した入浴・・38度程度で20~30分。半身浴もおススメ
・適度な光浴・・朝起きた時の光、昼間の光を浴びると睡眠に関係するホルモンが出る
・寝る前の食べ物や飲み物・・就寝前は飲まない食べない。寝る前のお酒は寝つきは良くなりますが、朝方の睡眠を妨げます。
・適度な昼寝・・・15分程度の昼寝は、午後の活動がいきいきできるようになります。
免疫力を上げて健康になるために、良質な睡眠がとれる生活習慣をこころがけましょう。
「適度な運動」が効果的
汗を軽くかく程度の「適度な運動」は、免疫力を上げ、健康の維持に効果的です。
運動というと、ジョギングやマラソン、筋トレなどを思い浮かべる方も多くいますが、激しい運動は必要ありません。
アスリートなど激しく運動をする人は、体や心のストレスから免疫力が低下するという報告もあります。
また、運動不足はエネルギーを産生する筋肉の衰えにより、熱が生まれず体温が低下することなどから、免疫力が低下すると言われています。
つまり、免疫力を上げるために必要なのは、「適度な運動」です。
適度な運動とは
筋肉の低下を防ぐ、ウォーキングより少し負荷がかかる運動を週2~3回程度
普段運動をしていない人が急に運動を始めると、体に急に負荷がかかるため、思わぬ怪我やかえってストレスから免疫力を下げかねません。
国では、健康のために普段の生活にプラス10分運動をとりいれることをおすすめしています(健康づくりのための身体活動指針~アクティブガイド~)。
自分ができる時間や無理のない運動を確認し、適度な運動ができるようにしていきましょう。
ストレスをためない生活を心がける
免疫力を上げるためには、ストレスをためないことがとても大切になります。
精神的なストレスは、免疫機能に大きな影響を与えることが確認されています。
強いストレスを受けると自律神経のバランスが乱れ、免疫に関わる分泌物などが低下して免疫力が弱まります。
強いストレスは、ライフステージの中でさまざまなものがあります。
このように、誰にでもありうるストレスは、免疫力の低下に結びつくことがあります。
いろいろなストレスが重なり体調に影響しないよう、1つづつ「ストレス管理」をしていくことが大切です。
寒さや暑さなど管理できるストレスはしっかり管理し、ためこまないようにしましょう。
受験やライフステージによる避けにくいストレスは、睡眠をとる、気分転換をする、しっかり食事をするなど他に免疫力を低下させない工夫をしっかり行うようにしましょう。
<ストレスをためない工夫(例)>
思い切り笑う
楽観的な思考を心がける(考え込まない)
睡眠を十分にとる
気分転換になるものを作る
ストレスは、私たちが思っている以上に健康に直結します。
「病は気から」ということわざがあるように、ストレスから病気に結びつくこともあるのです。
感染症の広まりから、普段の生活も制限されている今は、特にストレス管理が大切になります。
見えないストレスに早めに気づき、適度な気分転換をしながら「ストレスをためない生活」を心がけましょう。
ためがちなストレスをうまく発散して、心の免疫力もアップしましょう。
まとめ
私たちの体にもともと備わっている「免疫力」は、感染症や病気の予防のためには欠かせない機能です。
持っている免疫力のしくみをきちんと理解し、最大限免疫機能を発揮できる環境を整えてあげることで、恐ろしい感染症や病気のリスクを下げることができます。
免疫力を活かすのは、何より普段の食事や生活のリズムを整えることと、ストレスをためないようにすることです。
豊かな時代ですが、その分忙しさから食事や生活が乱れたり、ストレスをためやすい環境になりがちです。
免疫力を活かすことができるかどうかは、自分次第です。
健康でいることこそ豊かな生活の第一歩だということを忘れず、自分の免疫力を活かす生活ができるように考えてみましょう。