「乳幼児期の手がかかる食事が一段落・・。」
子どもが小学生になると、自分の力で食べられるようになり、さらに学校給食も始まってホッとする親御さんは多いのではないでしょうか。
でも、小学生から中学生の子どもは勉強や運動をたくさんして、心も体もぐんぐん成長する「成長期」の真っ最中です。
実はこの時期の食事内容が、大人になったときの健康を左右するだけでなく、勉強の質や運動のパフォーマンスに大きく影響するのをご存じですか?
自分のことは自分でできるようになった今だからこそ、食べるものや内容を意識することで、子どもの成長を伸ばし、未来の活躍を広げることができます。
今回は、成長期の食事が大切なワケや、必要な栄養素や食事のポイントなどを詳しく解説します。
未来が決まる!?成長期の食事が大切なワケとは
自分のことができるようになる小学生以降の食事は、手軽にとれる食事が多くなりがちです。
しかし、小学生~中学生の食事こそ、未来の活躍につながるとても大切な時期なのです。
大切な理由は大きく分けて3つあります。
・体の成長が最大になる「二次成長期」
・基礎となる内容を多く学ぶ「勉強の土台」となる時期
・体育や習い事など体をたくさん動かし、「活躍できる体」を作る時期
この3つの理由からもわかるように、成長期は将来さまざまな分野で自分の好きなことを活かして活躍するために、基礎となる頭と体をしっかりつくるための時期なのです。
ここでは、あらためて成長期の大切さについて考えてみましょう。
体の成長がMAXに!
子どもの体の成長が一番大きくなるのは、二次成長期の小学生~中学生の時期です。
この時期は成長の「ラストスパート」になるので、食事や生活習慣に気をつけることで、子どもが持つ「成長する力」を最大限引き出すことができます。
子どもの成長には、「一次成長期」と「二次成長期」があります。
<一次成長期>
生まれたばかり~4歳くらいまでの時期。
生まれた時の身長(50㎝程度)の2倍近くまで身長が伸びる。
<二次成長期>
体だけではなく運動神経や自律神経などの神経系の器官も完成形に近づき、メンタルも含めて子供から大人の体へと変化する時期。
一次成長期以降でもっとも身長が伸びる。
この時期が終わると骨の成長が止まり、身長はほとんど伸びなくなる。
女子が平均で10歳前後~、男子が平均で11歳6か月~二次成長が始まり、女子の方が早い。
二次成長は男女ともに17~18歳くらいまでに終わるが、遅い場合は20歳くらいまで続く。
小学生~中学生は、この二次成長の真っ最中になります。
二次成長の始まりは女子の方が早く、小学校4年生くらいから体つきが変わってきます。
男子は早い子で小学校6年生くらいから、声が出にくい、体毛が濃くなるなどの変化が出てきます。
実は、この二次成長は個人差がとても大きく、気づいたらすでに始まっていたということが多くあります。
つまり、「子どもに変化が出てきたら食事を気を付けよう」と思っていては、成長のスピードを最大限に活かすことができない可能性があるのです。
小学生になったら、いつ二次成長期が来てもいいように、食事や生活習慣をしっかり整えておくことが大切です。
「勉強の質」も食事が影響する!
栄養バランスを整えた食事をとることで、勉強を効率よく学ぶことができるようになります。
勉強と食事は一見関係がなさそうですが、実は大きく関係していることがわかっています。
勉強に大きく影響すると言われる食事のポイントは、2つあります。
1.朝食をしっかり食べる
2.鉄分をしっかりとる
朝食は、一日の始まりに脳と体に栄養を補給する重要な役割があります。
平成31年度全国学力状況調査によると、朝食を毎日食べている子は、食べていない子に比べてテストの正答率が高いことがわかっています。
この結果には、根拠があります。
脳がしっかり働くためには、炭水化物などからとれる糖質「ブドウ糖」という栄養が必要になります。
脳は寝ている間にも活動しているため、ブドウ糖は夜間にも使われ、起きた時には脳はブドウ糖の欠乏状態になっています。
そのため、朝食を食べずに勉強をおこなうと脳は本来の活動ができず、勉強の効率が落ちてしまうのです。
また、授業に集中ができなかったり、ぼーっとしている子は「鉄分」が不足している可能性があります。
鉄分は血液の成分で、酸素を全身に運ぶ役割があります。
そのため、鉄分が不足すると全身に酸素が運ばれず脳も酸欠になるため、ぼーっとしてしまうのです。
勉強が身に入らなかったり、いつもぼーっとしている子には「しっかりしなさい!」と叱る前に、食事の内容を見直してみることが大切ですね!
「スポーツが得意な子」は食事でつくる!
スポーツが得意な子を育てるには、成長と活動量に見合った食事を食べることが大切です。
「運動神経」という言葉をよく聞きますが、そのような神経は存在していません。
運動が得意かどうかは、小さいころからの食事や運動などの生活の仕方でかわってくるものです。
運動をするために必要な丈夫な「骨」や「筋肉」を作ることだけに目が行きがちですが、それだけでは体にあったパフォーマンスを100%活かすことはできません。
しっかり食べて消化し、栄養を吸収するための「内臓」や、体を動かす指令を出す「脳」もあわせて育てる必要があるのです。
必要な栄養を食事から十分にとり、体のさまざまな器官をしっかり育てながら、その体をつかって活発に運動することで「運動が得意な子」に育つのです。
運動な苦手な子と決めつけず、子どもが運動をやりたい!と思った時に活躍できるよう、基礎となる体づくりのための食事をしていることが大切なのです。
成長期だからこそ!意識してとりたい栄養素とは?
食事はバランスよく食べることが一番大切です。
成長期は心身ともに大きくなり、活動も活発な時期です。
成長期に必要な栄養素は大人よりも多く必要なものがあり、通常のバランスの良い食事をしているだけでは不足しがちになるものがあります。
栄養素によっては、成長期にしっかりとらないと高齢者になったときに不調の原因になるものもあるので、注意が必要です。
今だけでなく将来も見据えたうえで、どんな栄養素をしっかりとる必要があるのか考えてみましょう。
まずはしっかりエネルギー確保!「炭水化物」
成長期の体の発達と活動を最大限にするためには、炭水化物からエネルギーをしっかり確保することが必要です。
<炭水化物>
ごはん・パン・麺など 主に「主食」となる
体を動かすためのエネルギー源となる
人間が必要なエネルギー源は「炭水化物・たんぱく質・脂質」からとることができ、健康で暮らすことができるバランスが決められています。
炭水化物からは50~65%のエネルギーをとることが必要です。
近年、偏った情報やダイエット思考で「主食は少なめが一番健康に良い」というイメージが先行し、主食の摂取量が少なくなりがちです。
大人になり、病気の改善などを目的に主食量を一時的に減らすのは問題ありませんが、成長期の子どもが主食をあまり食べないのは、成長や活動に影響を与えかねません。
特に注意したいのは、スポーツなどを活発に行っている子です。
成長に必要なエネルギー量に合わせて、活発な活動に必要なエネルギー量もしっかり補わないと、「身長が伸びが悪い」など成長に影響が出てしまうことがあります。
成長や活動を最大限に活かしたいなら、まず3食しっかり主食を食べて、炭水化物からエネルギーを補給しましょう。
体の組織をつくる「たんぱく質」
体の組織をつくる「たんぱく質」は、身長が伸び、筋肉や血液が増える成長期には欠かせない栄養素です。
<たんぱく質>
肉・魚・卵・大豆(大豆製品)などに多く含まれ、主に「主菜」となる
骨や筋肉、内臓、血液、皮膚、髪など、体を作るもとになる栄養素。
ホルモンや神経伝達物質、免疫抗体の材料にもなる。
人の体の全てにたんぱく質が使われており、全身の2割を占めています。
たんぱく質は、成長期に必要な「成長ホルモン」の分泌を促したり、怪我をした皮膚や筋肉などの修復をするほか、ウイルスや細菌から体を守るためにも大切な栄養素です。
しかし、たんぱく質は一度に大量に摂取しても、体の中で効率よく使われません。
そのため、3回の食事にバランスよく分けて、欠食しないように食べることが大切です。
特に朝食は、たんぱく質が効率よく使われると言われています。
朝もしっかりたんぱく質のおかずを食べて、丈夫な体を作りましょう。
丈夫な一生ものの骨の素「カルシウム」
カルシウムは強い骨や歯をつくる素となるだけでなく、筋肉の収縮や神経を安定させる働きもある大切な栄養素です。
不足すると将来、骨がスカスカになる「骨粗鬆症」になりやすくなるため、成長期にしっかりとる必要があります。
<カルシウム>
骨や歯の素になる
牛乳・乳製品・小魚などに多く含まれる
カルシウムの必要な摂取量は、骨などの成長が著しい12~14歳の二次成長の最中が一番多くなっています。
日本人はそもそもカルシウムの摂取量が少ないといわれているため、意識してカルシウムの多い食品をとるように心がけないと、必要な量をとることはできません。
骨は常に、「作る」と「壊す」を繰り返して作り変えられています。
毎日カルシウムをしっかりとらないと、骨を「壊す」方が多くなり、弱い骨になってしまいます。
実は、骨や歯は一生使うものですが、骨の強さを表す骨密度(骨量)は20歳頃までにピークとなり、それ以降は増やすことは難しいと言われています。
そのため、骨密度を高めることができる子どものうちにしっかりカルシウムを摂っておくことが大事になります。
子どものうちに「貯骨」することが、生涯にわたって丈夫な骨をもち、健康でいることにつながるのです。
カルシウムは吸収率が低い栄養素ですが、食品やとり方によって効率よく体に取り込む方法があります。
<利用効率を上げる工夫>
①吸収率がよい食品を意識してとる・・牛乳・乳製品は吸収力が良い食品です
②カルシウムの利用効率を上げるビタミンDと一緒にとる
・食品からとる・・・魚(イワシ、サンマ、サケ)きのこ(きくらげ・しいたけ)など
・日光を浴びる・・・日光を浴びると体内でビタミンDを生成できる
③インスタント食品やスナック菓子を食べ過ぎない・・・インスタント食品などに含まれる「リン」がカルシウムの吸収を阻害してしまう
カルシウムを多く含む食品を食べるのが基本で、成長期は特に吸収率が高く1回の摂取量が多い牛乳や乳製品を毎日とることをおすすめしています。
ただし、食物アレルギーなどで牛乳が飲めない場合は、カルシウムの利用効率を上げる働きがあるビタミンDを食品からとったり、日光を浴びて体内で生成することを意識しましょう。
また、カルシウムの吸収を阻害する働きがある「リン」を多く含むインスタント食品やスナック菓子は、とりすぎに注意が必要です。
大人になっても丈夫な骨を保つためにも、成長期にしっかりカルシウムを意識してとりたいですね
勉強や集中力にも影響!「鉄分」
鉄分は成長期の子どもに不足しやすい栄養素で、体の成長だけではなく、集中力の維持や理解度にも関わっています。
<鉄分>
血液の材料(赤血球に含まれるヘモグロビン)となる。
ヘモグロビンは、酸素や栄養を全身に届ける役割がある。
赤血球やヘモグロビンが不足する状態を「鉄欠乏貧血」と言う
体が成長するにつれて血液の循環量も多くなるため、鉄分の必要量も増えます。
鉄分が不足し、血液中のヘモグロビンが不足すると、酸素や栄養を全身に必要な量を届けることができず、さまざまな悪影響がでてきます。
例えば、脳に酸素が不足することで、集中力がなくなりぼーっとする、筋肉に栄養や酸素がいかずだるさが出る、筋肉の発達に影響が出るなどが考えられます。
つまり、勉強に身が入らないという子は、実は鉄分不足は原因の可能性があるのです。
また、長距離走やバレーボール、バスケットボールなどの激しいスポーツをしている子は、その活動により赤血球が壊れることによりおこる「スポーツ貧血」になる可能性があります。
中学校の部活動などで激しく運動をしている子は、とくに鉄分をしっかりとる必要があります。
鉄分は多く含まれる食品が限られているため、意識しないととりにくい栄養素です。
鉄分を効率よくとるポイントは次のようなものがあります。
・吸収率が良い「ヘム鉄」を意識してとる(レバー・あさりなど)
・肉は赤身肉、魚は血合いの部分を意識して食べる
・鉄の吸収効率が上がる「ビタミンC」の食材を一緒にとる
鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、ヘム鉄のほうが吸収がよいため、しっかりとりましょう。
特にレバーやあさりには鉄分は豊富なため、月1~2回程度とりたい食材です。
非ヘム鉄の食材もコツコツとることで、必要な摂取量に近づくことができます。
さらに、鉄分の吸収はビタミンCと一緒に取ることで効率よくなります。
野菜や果物をとりいれたバランスの良い食事をすることで、自然と鉄分の利用効率をあげることができるのです。
知っておきたい!成長期の健康チェックと食事のポイント
子どもの成長にはさまざまな栄養素が必要ですが、わかっていてもしっかりとるのは難しいものです。
また、子どもの成長は個人差が大きく、一概に「必要な量」といっても幅があるのが実際です。
ここでは、子どもが今成長に必要な栄養が足りているのかの確認する健康チェック方法と、必要な栄養をバランスよくとるポイントを確認しましょう。
「体重計測」の習慣化で成長と健康のチェック!
ご家庭で子どもの成長と健康を簡単に把握する方法として、一番良いのは「体重計測」です。
成長期の子どもは、基本的には身長が伸び、それによって体重が増えていきます。
つまり、体重を確認することで成長や活動量に必要な栄養素が足りているかを把握することができるのです。
体重計測は、できるだけ条件を同じにして計る必要があります。
<体重計測の方法>
・起きてすぐ、トイレ後の同じ時間(タイミング)で計測する。
・できれば毎日、難しい場合は1週間に1回程度は定期的に計測する。
体重は一日の中でも食事や水分量などによって変動が大きいため、できるだけ同じ条件で計るようにします。
また、計測は定期的にすることで、小さな体の変化に早く気づくことができます。
はかった体重を確認するポイントは、次の通りです。
<体重確認のポイント>
・体重が減っていないこと
・少しずつでも増えていること
・急激な増減がないこと
単純な確認ポイントですが、定期的に体重を計っていないと、体重の増減を確認することができません。
子どもに必要な栄養量は、成長時期によりどんどん変わっていきます。
同じ量を食べていても体重の増加が良くなかったり、減ってしまっているときには、食事の量を見直す時です。
子どもの成長を最大限に活かすには、できるだけ早く成長期に気づき、必要な栄養を食べることが大切です。
子どもが元気な時はあまり体重を計ることはない方が多いようですが、学校の健康診断だけでなく、ご家庭でも定期的に計るようにしましょう。
家族みんなで体重計測を習慣化して、健康管理をしましょう!
朝食は必須!しっかり3食たべる
成長期は特に必ず朝食をとり、「1日3食」食べることが大切です。
体に必要な栄養量が多い成長期は、3食欠食なくしっかり食べることが必要になります。
体の大きさに対して必要な栄養量が多いため、1食でも欠食すると、必要量をとり切ることができなくなってしまうからです。
なかでも特にしっかり食べなければいけないのが、「朝食」です。
寝ている間に体は栄養を使わないように思いますが、実は成長ホルモンの分泌や脳の活動などが活発に行われているため、朝には体が栄養欠乏状態になっています。
そのため、朝食をしっかり食べないと、昼食を食べるまでの間体も脳も省エネ体制に入り、体がだるかったり、頭が働かない状態になってしまいます。
学校で活発に勉強と運動をするべき時間に体と脳が栄養欠乏状態なのは、子どもにとって良い状態ではありません。
しっかり朝食を食べて、体と脳を活発に動く状態にして学校に行くことができるようにしましょう。
「単品食べ」をしない工夫が大切
外食やお惣菜などを買って食べる時には、「単品食べ」にならないように意識することが大切です。
「単品食べ」とは、おにぎりだけ、唐揚げだけなど一つの品物で食事を済ませてしまうことを言います。
単品食べは食品や栄養素が偏るため、せっかく3食食べていてもバランスの悪い食事になってしまいます。
できる限り単品食べにならないよう、たんぱく質のお肉などや野菜のおかずなど、1~2品組み合わせて食べるようにしましょう。
お弁当や定食など、いくつかのおかずが組み合わせてあるものを選ぶのがおすすめです。
子どもが買い物をして選んだり、お友達と外食をするときにも自分でバランスよく選ぶことができるよう、普段から組み合わせて食べる習慣をつけておくようにしましょう。
まとめ
成長期の子どもは、将来健康にさまざまな活躍をする体を作る基礎となる大切な時期のため、しっかりバランスの良い食事をとることが必要です。
子どもの体重を確認しながら必要な食事量をとることで、成長期を100%活かして充実した活動をするだけでなく、将来にわたって活躍できる体となります。
子どもが1人でできるようになることが増えて手が離れてくると、仕事を始めるお母さんも多く、食事が簡単なものになったり、手を抜いてしまうこともあると思います。
毎日完璧な食事を作るのは大変ですが、お惣菜を買ったり外食をするなど上手く手を抜きながらも、バランスは考えて食事をすることが大切です。
栄養士などの食のプロが、ご家族に合ったバランスの良い作り置きおかずを作る、「ファミリーバランスサポーター」の料理代行を利用するのもおすすめです。
この機会に、子どもの将来の健康と活躍のために、成長期の食事をしっかりとることができているか見直してみましょう。