小学校に入学して、新しい生活リズムや変化に慣れるのが大変な時期ですね。
その中でも大きな関心事になるのが、「学校給食」ではないでしょうか。
給食がある幼稚園や保育園もありますが、「給食当番や食べる時間の長さなどがどう変わるのか」不安を抱えている方も多いようです。
今回は、学校給食を徹底解剖しながら不安や疑問を解消していきます。
お子さんも安心して、学校生活を楽しめるといいですね♪
安全で栄養たっぷり!教材としての役割もあるマルチ給食
子どもが食べる食事で1番気になるのが、安全面や栄養についてです。
学校給食は厳しい法律のもと、子どもたちが公平に安全に食べることができる食事になっています。
さらに、子どもの成長のために必要な栄養をとるだけではなく、「教育」として位置づけられている立派な「生きた教材」としての役割も果たしています。
平等に栄養をとり、安全に食べられる決まり「学校給食法」
学校給食は、「学校給食法」という文部科学省の法律に基づいて行われています。
その法律の中で、給食を通して子どもたちが学ぶべきこととして「7つの目標」が定められています。
その目標を達成するために、提供されるのが「学校給食」です。
法律の中では、
・必要な栄養を摂るための「学校給食実施基準」
・安全で衛生的に給食を提供するための「学校給食衛生管理基準」
・給食費の経費負担の割り振り
・給食を活用した食に関する指導の実施
など様々なことが定められています。
しっかり法律で定められているからこそ、公平に安心して学校給食が提供できているのです。
1日の1/2~1/3の栄養をぎゅっと濃縮!「学校給食実施基準」
学校給食実施基準では、その年齢にあった栄養素をどれだけ給食で摂ったらいいのかが定められています。
給食は1日3回の食事の中の1回にカウントされ、その年齢で必要な栄養素の1/3を摂ることになっています。
栄養素の中でも摂取量が多く成長期に必要な「カルシウム」は、1日の半分の量を学校給食で摂るように定められています。
これは、ご家庭では必要な量が摂りにくいと言われていることが考慮されているからです。
この量のカルシウムを1食で摂るのは至難の業ですが、そこは栄養士の力の見せ所です。
様々な工夫をして、この基準を満たした給食を提供しています。
びっくりするぐらい厳しいから安全!「学校給食衛生管理基準」
子どもが食べる食事は、衛生面や安全性が気になりますよね。
でも、ご安心ください。
学校給食は「学校給食衛生管理基準」という、数ある衛生管理の基準の中でもトップクラスの基準にあわせて作っています。
調理に従事する職員の細かい健康チェックから、施設設備・食品の加熱方法や温度管理・調理室内で食材ごとの通り道まで、しっかり管理されるように決められているのです。
家ではチャチャッと調理をしてしまう料理も、学校給食ではひとつひとつ、工程ごとに衛生管理の「手間」がかかっています。
調理作業の合間に行う手洗いも、1日何回行うか数えきれないほどです。
給食の調理員は、この基準を常に栄養士とチェックし、意識しながら調理しています。
そのため、調理室内はいつもピリピリした緊張感があるほどです。
子どもたちがおいしく・安心して給食を食べることができるのは、基準に沿った調理員のみなさんのきめ細かい作業と栄養士の綿密なチェックのおかげなのですね。
おいしさの理由は、1度にたくさんの食材を使う「大量調理」
「学校給食と同じレシピで作ったけど、味が違うといわれた。」というお話をよく聞きます。
給食がおいしい理由はたくさんありますが、その1つとしてあげられるのが「大量調理」だからという理由です。
学校給食は何百人という量の料理を1度に作るので、たくさんの材料を煮込んだり炒めることによって出てきた旨味をたっぷり味わえるのです。
もちろん、いかにおいしく作るかは「栄養士や調理員のプロの技術」があってこそです。
このように毎日おいしく食べらる学校給食ですが、実は子どもたちの成長を助ける役割だけではありません。
食べ方や見た目も大事。食べて学ぶ「生きた教材」
学校給食には、「将来健康に生活をするためにどのように食べたらいいか」・「何を食べたらいいか」ということを学ぶ「教材」としての役割もあります。
そのため、給食は「日々の経験と綿密なレシピ」・「調理員と栄養士の連携」をもとに子どもたちに知ってもらいたい食に関する情報を、ぎゅっと詰め込んでいます。
例えば
・「主食、主菜、副菜、汁」の組み合わせやバランス
・一食分の「量」の確認
・旬の食材の利用
・味つけの濃さ
・地場産物の利用(地産地消)
・日本の四季折々の行事や世界の食文化
といった観点を、食べながら学べるように考えられています。
他にも、栄養士は「学校の掲示物や給食時間の放送」・「給食だよりや献立表」を通して、さらに知識を深めてもらえるように情報を発信しています。
五感を使って食べる給食は、最高の「食育の教材」ですね♪
給食の気になる「心配事」とご家庭でやっておく「準備」
お子さんにとって初めてのことはなんでも心配ですが、特に健康や食に関わることは大きな関心ごとの1つですよね。
ここでは、よく耳にする「学校給食の心配事」とご「家庭でやっておくといい準備」についてお話ししていきます。
「好き嫌い」があるけど、大丈夫?
給食についての心配事で1番多いのが、「好き嫌い」に関するものです。
どんなお子さんも、苦手な食材やお料理は1つや2つあるものです。
昔は好き嫌いがあって残すと「無理やり食べさせられた」という声も聞きますが、今はそのようなことはしません。
お子さんの好き嫌いには理由があり、味や食感・色のほか、「嫌な思い出」なども特定の食べ物が嫌いになる原因に繋がります。
「無理やり食べさせる」事は「嫌な思い出」となり、嫌いな食品や料理をさらに苦手にさせてしまう原因になりかねないため、無理強いはしないのです。
「一口食べてみたら?」など、先生が食べるきっかけになる声掛けをすることはありますが、残しても怒られたりすることはありません。
「友達がおいしそうに食べていたから、食べてみた」・「食べてみたら意外とおいしかった」など、自然と少しずつ苦手な食べ物が減っていくのが理想です。
給食はクラスの友達と一緒に同じ食事をする中で、理想の形で好き嫌いが減っていく環境になっています。
【好き嫌いのためにご家庭でできること】
・色々な食材を食卓に出すこと
・苦手なものも定期的に食卓に出すこと
・食べられないことを怒らないこと
など
初めて見る食べ物は、「食べてみよう」と思うまでに時間がかかります。
また、苦手な食べ物を食卓に出さなくなってしまうと、食べてみようと思うきっかけがないまま好き嫌いは改善しません。
色々な食材や料理を「家族で楽しく食べる」環境が、好き嫌い改善の1番の解決策になります。
食べられなくても決して怒らず、ご家族がおいしそうに食べているところを見せること・少しでも食べられたらたくさんほめて喜んであげることが大切です。
そんなうれしい声掛けや雰囲気が、苦手な食べ物にチャレンジしようとするエッセンスになって食べられるようになっていきます。
決められた「給食時間」で、食べきれないかも?
小学校から変わる大きなことの1つに、「決められた時間の中で生活していく」ということがあります。
学校にいる時間は全て、「時間」で区切られて生活をしていくようになり、給食の時間も含まれます。
準備・配膳~片付けまでで約45分の給食時間の中で、決められた量の給食を食べるというのは、小学校1年生はとても大変なことです。
そのため、給食開始の最初は6年生が準備のお手伝いに来てくれたり、給食の時間を早めて時間を多くとったりと慣らしていく期間があります。
最初は時間内に給食が終わらないこともありますが、夏休み前ごろになると子どもたちはしっかりできるようになってきます。
6年生になると、給食の時間が余るほどに成長するのです。
子どもたちが、できるだけ早くこのリズムになれるためにご家庭でできる準備は、
・30~35分程度で食べるよう、食事の時間を区切る
・準備や片付けなど、自分の事やお手伝いを積極的にする
などです。
日々の積み重ねが、学校生活でお子さんが無理なく過ごしていける糧となるのです。
給食の量はどのくらい?気になる「量の調整」
好き嫌いの次に多いのは、給食の量についての心配事です。
その中でも、「小食のお子さんが給食を食べきれるのか」と、心配されている方が多います。
学校給食の多くは、給食当番が食缶から1人ずつお皿に盛り付けていく方式をとっています。
担任の先生が盛り付け方や量などを指導していきますが、基本的には「1人分」としてみんな同量を盛り付けていきます。
これは、もし食べられなくても、子ども自身が成長に必要な「1人分」の食べるべき量を知っておくことが大事だからです。
ただ、子どもたちの体格も様々なので、盛り付けられた量を食べきれない子がいることは、先生も承知しています。
そのため、実際は様々な方法で量の調整を行っています。
例えば次のような対応です。
・慣れないうちは最初は少な目によそい、おかわりで量を調整する
・一食分をよそっておいて、食べる前に減らす子、増やす子の調整をする。
調整の方法は、先生の経験やクラスの子どもたちの様子を加味しながら決めているようです。
調整の方法は、先生の経験やクラスの子どもたちの様子を加味しながら決めているようです。
ただし、今は感染症対策の観点から、各自のお皿によそったものは戻さないようにしています。
一生懸命食べても食べきれず、残してしまってもお子さんに無理強いすることはありません。
「食物アレルギー」の対応はしてもらえる?
食物アレルギーをもつお子さんは年々増えており、原因物質や症状もさまざまです。
そのため、お子さんが安全に生活をすることができるよう、学校生活や給食でもできる限り対応をすることが求められています。
学校で考えられる代表的な食物アレルギーの対応は、以下の通りです。
・原因物質のみを取り除いた、又は原因物質が入った料理を出さない「除去食」
・原因物質の代わりになる食材を入れて個別に調理した「代替食」
・原因物質が入った給食がある日のみ、又は毎日の給食そのものを食べず、家庭から代替のものを持参する「弁当持参」
食物アレルギーの重症度は様々ですが、アレルギーを引き起こす食品が混ざったものを少しでも食べてしまった場合、命に関わることもある疾患です。
対応は、給食の調理の場面だけではなく、給食当番の配膳の時間・給食中・片付けなど一連の流れの中でそれぞれ注意が必要になります。
場面ごとに関わる教員が多数いるため、綿密な連携が必要になります。
そのため、学校の規模や給食室の設備など、学校の環境によっては「除去食」や「代替食」の提供が対応が難しい場合もあります。
その場合は、アレルギーの原因になる食材が使用される日は、「自宅から弁当持参」などのご家庭にもご協力いただく対応が必要になる場合があります。
通われる学校が食物アレルギーに対してどの程度対応してもらえるのかを、早めに情報収集しておくことをおすすめします。
また、学校生活の中で食物アレルギーの対応を求める場合は、「学校生活管理指導票」という医師の指示書が必要になります。
これを提出してもらうのには、以下の理由があります。
・学校で間違えの無い対応を行うため
・過剰な必要のない対応をしないため
「間違えの無い対応」は、お子さんに必要な配慮の内容を把握し、学校で安全に対応をするということで。「過剰な対応をしない」とは、たくさんの児童が生活している中でも、必要なことを絞って確実に対応を行うという意味があります。
食品や学校生活の制限は、お子さんの生活の制限につながります。
必要な対応を医師に指示してもらうことで過剰な制限になることを防ぎ、成長を阻害しないという面もあります。
学校給食管理指導票は医師による記入が必要なため、時間に余裕をもって準備をすすめましょう。
一番大切なのは、学校と家庭の情報交換や連携です。
わからないこと、不安なこと、お子さんの体調など心配なことがあった場合には、都度担任の先生に相談するようにしましょう。
給食の「疑問」あれこれ、お答えします
学校給食は時代の移り変わりとともに、内容や提供の形が変わっています。
お子さんが食べている給食と自分の頃とを比べて懐かしくなったり、びっくりしたりするようです。
そんな中、学校給食をお子さんが食べるようになって改めて給食に関する疑問を感じたという声を耳にします。
今回は、その中からよくある疑問を3つお答えします。
給食に「牛乳」がつくのはなぜ?
「ごはんに牛乳は合わない」「和食に牛乳は非常識。お茶が正解」そんな意見をよく聞きます。
たしかに「生きた教材」として提供している給食の組み合わせとして、「ごはんに牛乳」は合わないというご意見はもっとものように聞こえます。
でも、給食で牛乳を出しているのには、こんな理由があるのです。
・成長期に多く必要なカルシウムを確実にとるため
・牛乳はカルシウムの吸収率がよいため
・安価で供給が安定しているため
学校給食では、一日に必要なカルシウムの半分を摂るように決められています。
実は、給食の調理に使う食材のみでこの量のカルシウムを毎日摂る献立を作るのは「至難の業」なのです。
牛乳は安価で供給も安定し、吸収率も良いというとても素晴らしい食品です。
そのため、給食では牛乳を「飲み物」としてというより、カルシウムがとれる「食品」として毎回提供しているのです。
給食を食べる子どもたちは、夏休みなどの長期休みになるとカルシウムの摂取率がとても少なくなるという調査結果があります。(※1)
「一日のカルシウム摂取量」
また、牛乳・乳製品を含む完全給食を食べることで、成長期の骨量が高くなるという調査結果もでています(※2)。
子どもたちの健やかな成長を考えた時、牛乳を含めた給食が必要なことがわかります。
(※1)独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成22年度 児童生徒の食事状況等調査報告書【食事状況調査編】」より引用
「Ⅱ調査結果 5.学校給食と学校給食のない日の昼食における栄養素等及び食品群別摂取状況」P.148(PDFファイル)より引用
(※2)公益財団法人学校給食研究改善協会「学校給食でほぼ毎日牛乳が出される理由」
残した給食はどうなるの?持ってかえっていいの?
食中毒予防などの衛生管理・給食費や給食として使うことを目的にした補助金の適正利用などの観点から給食の持ち帰りはできません。
食べきれずに残してしまった「給食」の多くは、ごみとして廃棄されます。
学校給食で発生する調理くずや食べ残しなどは、児童1人当たり年間17.2kg、日本の学校給食全体で年間5万tも発生しているといわれています(※3)。
これらは「食品ロス」とも言われ、環境問題として課題になっているのです。
もちろん食品ロスを無くすためでも、「残った給食を家に持って帰る」ことはできません。
給食は児童生徒の必要量を計算して作られているため、食べきってこそ子どもたちの成長に結びつくものです。
決められた量をしっかり食べて給食の残食量を減らしていけるよう、学校では給食・食育指導や調理の工夫を行い、日々努力をしています。
ご家庭でも残食量・食品ロスの問題という観点から、「自分や環境のために残さず食べる」という意識を持つことができるよう、お子さんと話してみてはいかがでしょうか。
(※3)平成29年度学校給食の実施に伴い発生する廃棄物の3R促進モデル事業に係る実施市区町村の公募について|環境省 より引用
安い給食費の秘密は?
学校給食の魅力の1つとして、「安価」ということがあげられます。
平成30年度の「学校給食実施状況調査(文部科学省)」によると、1食分の給食費の単価の平均は、小学校で約250円、中学校で約292円でした。
こんな単価では普通、バランスの良い1食分は食べられませんよね?
実は保護者の方から徴収している学校給食費は「食材料費」のみと学校給食法で決められているため、こんなに安いのです。
給食を作るのには実際は、人件費や施設管理費、光熱水費等食材料費のほかにもたくさんの費用がかかっています。
それらを加えると、1食分は600~700円程度になり、これが本当の給食の1食分の費用になります。
保護者負担分との差額は、各市町村が賄っているのです。
しかし、食材料費のみと考えても給食費はとても安いと感じます。
この食材料費の安価を可能にしているのは、「大量購入」という給食ならではの購入方法です。
入札などを通して、大量に、期間を決めて業者から買うことで、一般流通価格より安く買うことができているのです。
さらに「学校給食」という特性から、業者のみなさんも「子どもたちのために」と新鮮で、品物が良いものを安く売ってくれているという背景もあります。
学校給食は、業者のみなさんの「気持ち」にも支えられているのです。
たくさんの方に支えられて、安価でおいしい給食ができあがっていることを、子どもたちに伝えていきたいですね。
まとめ
初めての給食に不安は多いことと思いますが、子どもの順能力は素晴らしく、すぐに慣れていくものです。
そして「学校給食」は、「安全」「おいしい」「栄養たっぷり」を可能にするために、たくさんの決まりごとや努力により提供されています。
お子さんの学校生活の中でも、給食は楽しくおいしい、大切な想い出の一部となることと思います。
最後になりますが、給食は栄養をしっかりとれるといっても、あくまで1日3回の食事のうちの「1回」です。
残りの2食はご家庭でしっかり食事を摂らないと、成長に必要な栄養はとれません。
ご家庭でも、給食の献立やレシピなどを参考に、しっかり食事ができる環境を作り、学校と連携してお子さんの成長を見守っていきましょう。