現代は、飽食の時代と言われています。
世の中には食べ物があふれ、災害などによって流通システムが壊れない限り、どこに行っても手に入ります。
そんな中でも子どもから大人まで、あらゆる年代で栄養失調になることをご存じですか?
家庭料理を充実させることで、気付かぬうちに陥る栄養失調を予防しましょう。
現代における栄養失調とは?
食べたいものがすぐに手に入り、簡単に食事を済ませることが可能なのに、なぜ栄養失調が起こるのでしょうか。
実は、カロリーは十分足りていても、極端に偏った食生活が原因で必要な栄養素が不足しているということがあるのです。
また、高齢者から子どもまで世代によっても不足している栄養素が異なります。
それぞれ、どんな栄養素が不足しているかを具体的に見ていきましょう。
高齢者に多い低栄養
高齢者に多く見受けられるのが、「低栄養」の状態です。
加齢に伴い様々な能力の低下であったり、運動不足が原因で食欲も低下し、栄養不足に陥りやすいのです。
主に不足しがちな栄養素は、
・タンパク質
・カルシウムや鉄などのミネラル類
・食物繊維
があげられます。
また、咀嚼力が弱くなるとお肉などの硬い食物が食べにくくなります。
加齢により足腰が弱ることで調理や買い物が億劫になり、食事を簡単に済ませがちになります。
このような原因で食事のバランスが崩れ、栄養素が不足する状態に陥ります。
▼高齢者の体調管理については、こちらの記事もどうぞ▼
子ども~中高年に多いミネラル不足
核家族や共働き世帯が増え、子どもの孤食や仕事などの多忙化により食事を簡単に済ませることが増えています。
食事のバランスが崩れがちになり、ビタミン・ミネラル不足が深刻化しています。
また、生活習慣の乱れも起きやすい年代と言えます。
【乱れた生活習慣の例】
・夜遅くまで起きていて、朝起きれず、朝食は食べない。
・昼食は給食以外の時はカップラーメン、菓子パン、ジャンクフードなど。
・間食として、清涼飲料水や炭酸飲料やスナック菓子を食べる。
・夕食は肉中心のメニュー。(魚や野菜が少ない)
栄養素で言えば糖質、脂質過剰、カルシウムや鉄などのミネラル、ビタミンが不足しています。
若年女性に多い痩せ傾向
若年女性に多いのは、極端なダイエットや間食を中心とした食事により栄養素の不足に陥るパターンです。
極端なダイエットでは、同じ食品ばかり食べたり炭水化物を必要以上に減らしすぎることで、カロリー・ビタミン・ミネラルの不足に繋がります。
必要な栄養素まで不足すると、血流が悪くなって肌の調子を崩したり、冷えや貧血にもつながってしまいます。
返って美容からは、かけ離れてしまいますね。
欠乏しやすい栄養素と症状
普段の食生活で不足しがちな、「栄養素の役割」と「欠乏した時の症状」についてみていきましょう。
またこれらの栄養素を豊富に含む食材も記載しますので、積極的に食事に取り入れていきましょう。
1つの栄養素を補うだけでなく、主食・主菜・副菜のバランスの良い食事を基本とした上で取り入れることも大切です。
タンパク質
タンパク質は、筋肉や皮膚、内臓、髪の毛、血液などをつくる材料です。
タンパク質が不足すると筋肉が衰えるなど身体の機能が低下するので、体力や思考にも影響します。
特に、高齢者において不足しがちです。
タンパク質を多く含む食材・・・肉、魚、卵、大豆製品
カルシウム
カルシウムが不足すると骨と歯が弱くなったり、成長に関わります。
神経質になり、イライラしたり、落ち着きがなくなったりします。
また骨粗鬆症の原因となり、高齢者では寝たきりの原因になるので、不足しないように摂取しましょう。
カルシウムを多く含む食材・・・乳製品、煮干し、海藻類、干しエビ、緑黄色野菜など
鉄
鉄は、血液の細胞である赤血球の主成分であるヘモグロビンの材料となります。
鉄が不足すると鉄欠乏性貧血を起こして、立ちくらみ、動悸、集中力の低下、体温調節機能の障害、免疫と感染抵抗力の低下など、様々な症状がおきます。
鉄を多く含む食材・・・動物のレバーや赤身肉、貝類、小魚、大豆、小松菜など
ビタミン
ビタミンは、他の栄養素がスムーズに働くようにサポートする役割です。
ビタミンB1・B2・ナイアシンは三大栄養素の代謝をサポートする働きがあります。
ビタミンA,D,B2,B6は、血管・皮膚・骨などの健康維持に関わります。
ビタミンA,E,Cは、抗酸化作用が主な働きです。
ビタミンは微量栄養素と言われ必要な量はわずかですが、その量が満たされないと欠乏症を起こすので、どの種類も過不足なく摂るようにしましょう。
【それぞれのビタミンを多く含む食材】
ビタミンA・・・鰻、レバー、人参、モロヘイヤなど
ビタミンD・・・魚、キノコ類など
ビタミンE・・・アボカド、かぼちゃ、ナッツ類など
ビタミンK・・・納豆、モロヘイヤ、海藻類など
ビタミンB1・・・豚肉、鰻、玄米など
ビタミンB2・・・レバー、鯖、卵、キノコ類など
ナイアシン・・・鶏肉、カツオやブリなどの魚など
ビタミンB6・・・肉、マグロやカツオ、米など
ビタミンB12・・・肉や魚、貝類など
パントテン酸・・・鶏レバー、納豆、アボカドなど
ビオチン・・・様々な食品に含まれていて、腸内でも作られる。
葉酸・・・ほうれん草、ブロッコリー、菜の花など
ビタミンC・・・柑橘類、じゃがいも、さつまいも、葉物野菜など
食物繊維
食物繊維は、「腸内環境を整え血糖値の上昇を抑える働き」・「コレステロールの吸収を抑制する働き」があります。
食物繊維には、水溶性と不溶性があります。
水溶性は、ヌルヌルとした粘性と水分保持力が強く、老廃物を包んで排泄する働きがあります。
不溶性は、水に溶けにくいので、消化されず水分を吸収して、膨張し、腸を刺激し便通を促進します。
食物繊維が、不足すると便秘になります。
水溶性の食物繊維・・・海藻類、こんにゃく、大麦、果物や野菜など
不溶性の食物繊維・・・大豆やごぼう、きのこなど
家庭料理における栄養不足を予防する工夫
性別や年代によって、不足しがちな栄養素に違いがあります。
普段の食生活で必要な栄養素が整うように、家庭料理でできる工夫をまとめました。
高齢者のたんぱく質不足には
高齢者の世代は、食事が単調で粗食になりやすいので、肉や魚、卵や大豆製品などのタンパク質を意識してとるようにします。
調理が難しければ缶詰などが手軽にタンパク質を摂取できますが、塩分が多いので野菜と混ぜるなど工夫が必要です。
おすすめのレシピ:
「さんま缶の卵とじ」
<材料>
さんまのかば焼き缶1缶、玉ねぎ1/4個、人参5cm、卵1個、青ネギ適量
<作り方>
① 鍋に玉ねぎスライス、人参千切りと水を少々入れ、蓋をして加熱。弱火で野菜を軟らかくしたら、さんま缶を汁ごと入れる。
② 沸騰したら溶き卵を入れ卵とじにし、青ネギを散らす。
若い世代に多いミネラル不足には
食事は、バランスよくを基本として主食となる炭水化物・主菜となるタンパク質・副菜となるビタミンとミネラルをしっかり補いましょう。
調理例:
例えば、うどんだけの食事であれば、卵を落として、一緒におひたしやサラダを食べる。
おにぎりの場合は、ちりめんじゃこや青のり・ゴマを混ぜてミネラル豊富なおにぎりにする。
作る時間がなくお惣菜などで済ませてしまう場合も、なるべく野菜が多く使ってある物を選ぶようにする。
具だくさんのお味噌汁やスープを、作り置きしておくのもお勧めです。
家庭料理に活かせる栄養の知識を増やす方法
食事は大切だけど、「どうやって知識を増やしたらいいの?」と考えられたことはありませんか?
資格などの勉強をすると知識を学べ家庭料理に活かせることは間違いありません。
なかなかそこまで時間がとれないという方には、本で勉強する方法がお勧めです。
しかし食や栄養学の本は山ほどあり、迷ってしまいますよね。
最初に難しすぎる本を選んでしまうと、続かなくなることも…
まずは、「楽しく勉強できそう!」というものを基準に選びましょう。
いろいろな種類がありますが、図で見やすいものやイラストでわかりやすく書いてあるものもあります。
子どもと一緒に、楽しく勉強することもできますね。
一冊あると強い味方「便利帳」
食材についての便利帳は、食材別に見ることができます。
食材の旬やどんな栄養があり、どう調理するのが適しているのか、また、どの食材と組み合わせて食べると効果的に栄養を摂取することができるのかなどを知ることができます。
【おすすめの書籍】
・食材の栄養素を最大限に引き出す便利帖 監修五十嵐ゆかり 永岡書店
・体にいい食材の便利帳 著者若宮寿子 宝島社
図やイラストで楽しく学べる「図鑑」
栄養素についての図鑑は、難しい栄養素を図で楽しく勉強することができます。
不足しがちな栄養素を多く含む食材なども記載してあるので、便利帳と合わせて持っておくと普段の食事の参考になります。
【おすすめの書籍】
・世界一やさしい!栄養素図鑑 監修牧野直子 新星出版社
・たべることがめちゃくちゃ楽しくなる!栄養素キャラクター図鑑 監修田中明、蒲池桂子
まとめ
飽食の現代にも、栄養失調に陥る場合があります。
昔の栄養失調とは違ってカロリーは十分に足りているのに、たんぱく質・ミネラル・ビタミンが不足しがちなのが特徴です。
家庭料理で食事のバランスを整え、不足しがちな栄養素を積極的に補うように工夫しましょう。