お正月のおせちは、節目の祝いに食べる行事食です。
おせち料理は大人にとっては「ごちそう」でも、子どもとっては馴染みの薄いものが多く、なかなか進んで食べてくれないということもあります。
そこで今回は、子どもが食べやすいおせち料理を紹介します。
おせちは、料理ごとに縁起の良いメッセージが込められています。
一緒に料理を作ったり、おせちを食べたりしながら縁起の由来について話ができたら楽しいですね。
子どもに伝えたい行事食
これからグローバルな世界で生きていく子どもたちに、日本の文化を引き継いでいってもらいたいですね。
行事食は、日本の文化を体験するのにぴったりの媒体です。
ハレの日と、ケの日の違いがわかると、なぜ行事食があるのか理解しやすくなります。
「ハレとケ」とは、『非日常と日常』という意味があります。
それぞれ、どのような意味があるのかみていきましょう。
「ハレ」の日と「ケ」の日の意味
「ハレ」の日と「ケ」の日には、それぞれ次のような意味があります。
「ハレ」…お祝い事や公的なお祭りなどのいつもとは違う特別な日のこと
「ケ」…いつもと同じ普通の日のこと
古来の人々は、単調に繰り返すだけの辛い日常「ケ」の中に特別な「ハレ」の日を作ることで、『生活に潤いや活力を与え、生活リズムを整える』目的があったと考えられています。
また、「ハレ」の行事は、季節の変わり目や人生の節目に行われることが多いです。
神様に無事に作物が収穫できたことを感謝をすると共に、特別な食事を作ってお供えし、神様にお供えした食事と同じものを食べることで『災いを払い、家族の健康や幸せを願う』意味もありました。
「ハレ」の日には、いつもとは違う服を着て、特別な食事を楽しむだけでなく、言葉遣いや作法までも変えて明確に「ケ」の日と区別していたと言われています。
当たり前のように毎年行っている行事も「ハレ」と「ケ」の意味を理解することで、また違った気持ちで過ごすことができますね。
ハレとケの由来とは?漢字はある?
「ハレとケ」は、日本民俗学の開拓者と言われる「柳田國男(やなぎた くにお)」氏(1875年~1962年)によって見出された概念です。
【ハレとケの漢字】
・「ハレ」は漢字で表すと、「晴れ」または「霽れ」
・「ケ」は漢字で表すと、「褻」となります。
→民俗学的にはカタカナで表記されるのが一般的です。
「ハレ」というのは、物事の時間的な節目(ふしめ)を意味する言葉で、『晴れ(霽れ)』が語源と言われています。
この、「節目」を意味する「ハレ」は、『晴れ姿』や『晴れ舞台』といった言葉にも用いられています。
「ケ」というのは、日常を表す言葉である『褻(け)』が語源だと言われています。
日常を表す「褻」というのは、『褻着(けぎ)』や『褻稲(けしね)』といった言葉に用いられており、このような言葉が由来となって生まれたとされています。
お正月におせちを食べる意味を考えながら食べると、感慨深いですね。
こどもも一緒におせちを食べるなら、どのような料理がよいでしょうか。
子どもが食べやすくなるポイント
おせち料理は、大人にとってはごちそうですが、子どもには食べにくかったり苦手だったりしますよね。
子どもが苦手に思いがちなおせちも、食材選びや味付け・食感を意識することで、好きになってもらえる機会になりますよ。
普段食べなれた食材を使う
おせちによく使われる食材にこだわらず、子どもにとって馴染みのある食材に置き換えることで、食べやすさをグンと上げることができます。
これは、繰り返し見て、食べたものは安心感を得やすいからです。
たとえば、次のように定番のおせちの食材を、子どもに馴染みのある食材に変えてみてはいかがでしょうか。
〈例〉
八幡巻きの牛肉→牛肉
紅白かまぼこ→チーズとかまぼこ
子どもが好きな食材を使うと、喜んで食べてくれますよ。
甘味・うま味を活用する
食べたくなる工夫として、人間が本能的に求める味「甘味」と「うま味」を活用するという方法があります。
一般的に味には、5つの種類があり、体に働きかけるシグナルがあります。
【基本五味とそれぞれのシグナル】
・甘味:エネルギー源としてのシグナル。
・塩味:ミネラルとしてのシグナル。
・酸味:腐敗を示すシグナル。
・苦味:毒物を示すシグナル。
・うま味:アミノ酸のシグナル。
このうち甘味は、主な成分が糖であることから、生きるためのエネルギーとして求めやすい味になります。
また、うま味はアミノ酸のシグナルとして、身体を作るために必要なので求めやすい味になります。
どちらも体が受け入れやすい、本能的に好む味のため、甘みとうま味を利用しておせちを作ると、子どもも受け入れてくれやすくなります。
見た目の変化や色づかいを工夫する
おせちはもともと見た目が良いく食欲がわくものですが、子どもが好む見た目も取り入れると、手を伸ばして食べてくれるようになります。
大根やにんじんを動物の形に型抜きしたり、ウインナーをタコの形にしたり、おにぎりに海苔でパンダを描いたりと、ちょっとした子どもが好む工夫をすると子どもは大喜びです。
おせち料理でも、普段と違う見た目にすることで、お祝いの雰囲気を味わってもらえますよ。
同様に、色づかいも食べやすさに繋がります。
1つの色に偏らないように、複数の色味がある料理を並べることで、華やかさを演出できます。
【見た目が華やかになる5つの色】
・黄色:チーズ、じゃがいも、ゆずなど。
・赤色:肉、ニンジンなど。
・緑色:ほうれん草、小松菜など。
・白色:大根、かぶなど。
・黒色:海苔、昆布など。
カラフルな彩りを意識すると、自然と栄養バランスが良くなるメリットもあります。
これらを踏まえて、子どもが喜ぶおせちレシピを紹介します。
子どもが喜ぶおせちレシピ5選
まずは、子ども好む食材や、食べやすい食材を使ったおせち料理を紹介します。
スーパーなどで手軽に手に入る食材や、旬の食材を使っていま手軽に作ることができますよ。
市松模様のちくわチーズ
市松模様のちくわチーズは、火を使わずに作ることができる簡単レシピです。
子どもと一緒に作るときに、ぴったりです。
〈レシピ〉
(材料)
・ちくわ 1本
・プロセスチーズ 1個
・海苔 少量
(作り方)
1.ちくわは縦に、1/4に細長く切る。
2.チーズも、縦に細長く切る。このとき、ちくわと同じくらいの太さだときれいにできる。
3.1と2を交互に2つ重ね、海苔で巻き、切る。
市松模様は、その柄が途切れることなく続いて行くことから、繁栄の意味が込められています。
その「繁栄」の意味から、子孫繁栄や事業拡大など縁起の良い模様として沢山の人に好まれています。
見た目からも、お正月の雰囲気が伝わりますよ。
梅型のゆず&かぶ
梅型に飾り切りしたにんじんが入るお煮しめの代わりに、甘酸っぱいゆず&かぶのレシピがあります。
〈レシピ〉
(材料)
・ゆず(皮つき) 1/4個
・かぶ 1個
・砂糖 大さじ1
・水
(作り方)
- ゆずは、皮を薄くむき、千切りにする。果汁を絞る。
- かぶを輪切りにし、梅型に抜く。
- 鍋に、材料すべてを入れ、カブがかぶるくらいの水を入れる。
- かぶに火が通るまで、煮る。
梅の花は、冬から春にかけて咲きます。
お正月の季節が近いことから、梅をイメージして梅型の料理がおせちに使われることが多いです。
梅の花はまだ肌寒い早春に最初に咲く花で、寒さに耐えて芳しい香りの花を咲かせます。
梅の咲く様子が、 清廉潔白や節操というイメージにつながるため、縁起が良いといわれています。
また、花が咲いた後に必ず実を付ける事なども、縁起のよさに結びついています。
お煮しめに使われる食材にも、理由があります。
◎根菜などを中心に、様々な山の幸を一緒に煮込んだ煮しめには、家族が一緒に仲良く暮らすという願いが込められているから。
◎根菜は、地に根を張るため、辛抱強い気持ちを養うことに繋がる。
煮物は茶色になりがちですが、ゆず&かぶの鮮やかな黄色と白色で、おせちのイメージを一新することができます。
かぶは、冬が旬なので、甘くておいしいですよ。
ゆずは、小さなお子さんがいる家庭ではなかなか登場しづらい食材ですが、おせちはゆずに触れることができる、良い機会になります。
ゆずの苦味が気になる場合は、砂糖の量を少し多くしてみてくださいね。
福を巻き込む肉巻きポテト
おせちの巻物では、昆布巻きや八幡巻きが有名ですが、子どもには食べづらいこともあります。
そんな時は、ひき肉とジャガイモを使った巻物にして、食べやすいおせちに変身させましょう。
〈レシピ〉
(材料)
・豚ひき肉 50g
・じゃがいも 1個
・たまねぎ 1/10個
・塩コショウ
・砂糖/しょうゆ/みりん 各大さじ1
(作り方)
1.たまねぎはみじん切りにし、ラップをしてレンジ500wで1分30秒加熱する。
2.じゃがいもは拍子切りし、ラップをしてレンジ500wで2分加熱する。
3.ボウルに1と豚ひき肉、塩コショウを入れてよくこねる。
4.2のじゃがいもを巻き、フライパンで焼く。
5.全ての面の焼き色が付いたら、砂糖/みりん/しょうゆを入れ、全体にたれを絡める。
八幡巻きには、牛肉やウナギなどメインとなりそうな食材が使われますが、実は料理の主役はごぼうです。
【八幡巻きにごぼうが使われる理由】
◎成長するにつれて地中に深く根を張り、耕土の深い畑で栽培するとその根はより長いものになる。
◎ごぼうの根部はマイナス20度に耐えられるほどであり、長根種ではその長さが1メートルに達するものもある。
見た目は細くとも力強く地中に根を張るごぼうを使った八幡巻きは、その生育過程にあやかり、健康や長寿を願った料理としておせち料理のひと品になりました。
またごぼうは、家族が土地に根づき、太い絆や安泰が未来永劫絶えないよう願掛けされた食材でもあります。
じゃがいもも、同じ根菜です。
根っこが膨らんだ部分が、じゃがいもとして食べられているため、ごぼうと同様に健康や長寿をあやかることができるでしょう。
じゃがいもは、種イモとして次のジャガイモを作ることができるので、子孫繁栄という意味でも納得ですね。
おせちに使われている食材の意味を理解して、馴染みのある食材に変えて、お子さんと一緒においしく食べてみましょう。
まめに暮らそう、ココア豆
おせちの定番「黒豆」も、お子さんが食べやすいココア味に変えると、喜んで食べてくれます。
豆は、「畑のお肉」と呼ばれるほど栄養価が高く、お子さんに食べてほしい食材です。
そんな豆を使った、お子さんが食べやすい甘いレシピを紹介します。
〈レシピ〉
(材料)
・炒り豆 30g
・ミルクココア 大さじ1
・バター 小さじ1
(作り方)
1.鍋にバターを入れ溶かす。
2.炒り豆を加え、かりっとするまで炒める。
3.ミルクココアを加え、全体に絡める。
炒り豆がない時は、大豆の水煮でも作ることができます。
おせち料理には、なぜ黒豆が入っているのでしょうか。
【おせちに黒豆が入る理由】
◎「まめ」に働く、「まめ」に暮らすなどの意味(語呂合わせ)があるから。
◎黒豆の意味は、”元気・丈夫・健康な生活を願う”こと。
◎黒色は邪気をはらう魔除けの色とされてる。
◎「1年間の厄払いをして、今年1年元気に過ごせるように」という願いが込められている。
調理方法の特徴としては、関西では柔らかく丸くなるよう煮る、関東では「しわが寄るまで元気に働けるよう」敢えてしわが付くように煮る、など地域によって差があります。
黒豆ももちろん素敵ですが、今回は子どもにも食べやすい味付けと食感の豆の料理です。
ココアも黒いので、黒豆と同様の縁起を担ぐことができますよ。
よろ「こんぶ」を使ったお浸し
おせちも使われる昆布には、「喜ぶ」を洒落た意味が込められています。
新年を迎える喜ばしい気持ちを、昆布で表現してみましょう。
〈レシピ〉
(材料)
・ほうれん草 1束
・塩昆布 小さじ1
・ごま油 小さじ1/2
(作り方)
- ほうれん草は、食べやすい長さに切り、茹でる。
- ほうれん草の水気を切り、塩昆布とごま油で和える。
昆布は、噛み応えがあるため、細切りの塩昆布を使うことでこどもでも噛みやすくなります。
また、昆布にはグルタミン酸といううまみ成分が豊富に含まれているため、野菜を食べやすくしてくれる効果もあります。
子どもが好きなおせち料理が増えたら、嬉しいですね。
まとめ
お正月のおせちは、年に一度のめでたい食事です。
日本ならではの文化を知って体験することは、グローバルな社会で生きていく上で大切なことですね。
なにより、家族ならではのおせちは、子どもの一生の思い出になります。
子どもが食べやすいおせちを作って、好きな料理の1つになってもらえたら嬉しいですね。
美味しいおせちで、家族と素敵な時間を過ごし、良い一年を迎えられますように。