「自分の知識不足を解消したい」「仕事の幅を広げたい」など、様々な理由からスキルアップをしたいと考えたことはありませんか?
管理栄養士は、1度取得すると更新の必要がない国家資格です。
そのため、継続して責任をもって仕事をするだけでも、自らの意思をもって勉強しスキルアップする必要があります。
さらに活躍がしたいと考えるなら、なおさらです。
ただ、スキルアップしたいと思っても「何から手を付けたらいいのかわからず、なかなか進まない」という声をよく聞きます。
逆に、やみくもに新しい資格に手を付けて、時間とお金ばかりかかって結局何も身につかない、という状態に陥ることもあります。
今回は、忙しく限られた時間や資金の中でも、効率よくスキルアップを行うために必要なことを考えてみましょう。
スキルアップにつながる5つの力とは?
食と健康に関する事は、年々興味関心が高くなっており、管理栄養士の仕事の幅も広がっています。
新しい資格も多く、関連した情報もあふれているため、色々調べるだけでも時間と労力を必要とします。
まずは、自分にとって何が本当に必要なスキルアップになるのか、ということを知ることが大切です。
ここでは、管理栄養士が仕事をする際にスキルアップにつながる「5つの力」について解説します。
自分自身が今できている事、課題となっている事を整理しながら、考えてみましょう。
「最新情報を常にチェック」は最低限のスキルアップ
更新が必要ない管理栄養士の資格は、常に自分自身で最新の情報を手に入れていかなければいけません。
健康や食に関する研究は日々進歩しており、数年前の常識が今は通用しなくなっているということも少なくありません。
栄養学のプロとして、間違った情報を伝えることは、絶対にあってはいけないことです。
例えば、以前は「コレステロールが高い人は、卵はあまり食べてはいけない」という常識がありました。
しかし今では「アジア人は1日1個程度なら心血管疾患のリスクを低下させる」という、以前とは逆の結果の研究結果がでています。
また、食物アレルギーなどの最新の情報を正しく理解していないと、対象の方の命の危険にも及ぶ可能性があるのです。
最新の栄養学などの関連情報をきちんと理解し、自分の仕事に反映させていくことは、日々の最低限のスキルアップとなります。
分野のエキスパートに!自分だけの「強み」をつくる
管理栄養士としてより求められる事は、分野を絞り、知識を深め、専門性を高めるということです。
管理栄養士の資格取得の際に学ぶことは、様々な分野を網羅したとても幅広い内容のため、「広く・浅く」学んでいます。
全ての分野を極めようとすると、結果的に浅い知識のまま終わってしまい、実際の仕事では力を発揮できません。
インターネットの普及により食の情報はあふれ、浅い知識は管理栄養士からわざわざ聞かなくても安易に手に入れることができます。
そのような現代で求められているのは、次のような管理栄養士です。
・充分な経験と分野に精通した知識を持っている
・あふれた情報を精査し、根拠をもって選別できる
・個々の生活習慣や人生感を活かして、臨機応変な対応・指導ができる
このような求められている管理栄養士になるために必要なのが、信頼性のある1つの分野のエキスパートとなる資格や経験です。
専門性は自分の「強み」となります。
「強み」は現在の仕事の内容を充実させるだけでなく、職場における自信の評価や信頼の向上にもつながるのです。
自分の目指したい専門分野は何なのか、しっかりと見つめ、極めるためのスキルアップ方法を考えてみましょう。
「コスト意識」と「分析・評価能力」は必須
どんな仕事をするうえでも必要なことは、「コスト意識」です。
限られた予算や人材をより良く使うためにはどうしたらいいか、日常的に意識ができる人材は、高く評価され、必要とされます。
日常的なコスト意識とは、調理現場で考えると、以下のようなことが考えられます。
・人の配置(調理スタッフの割り当ては適正か)
・光熱水費は無駄にしていないか(必要のない水の出しっぱなしなど)
・食材の廃棄は適正か(調理の廃棄率が多くなっていないか)
必要な部分にはしっかりお金をかけ、必要のない部分は前例にとらわれず削減する、という柔軟な考え方ができることが大切です。
また、自分の仕事が内容・コスト等様々な観点からどのような結果に結びついているか、数値的に「分析」する能力も必要です。
例えば、栄養相談を10人に実施した結果を報告するとします。
「みんなそれぞれ気づきがあり、喜んでもらえました。」
という数値がない漠然とした結果と、
「3か月で3人、6か月で5人の方が目標体重に達成することができた。残り2人は目標達成には至らなかったが、目標の8割改善を達成した。」
という数値化した結果では、どちらが仕事の結果をわかりやすく表現しているかは一目瞭然です。
コスト削減の評価も同じです。
「廃棄率〇%削減」
「光熱水費削減のため新しい機器を導入すると、年間〇円の削減となり、調理効率が〇%アップする」
など、数値で表して分析することが必要です。
数値化した仕事の結果は、多職種の人にも効果がわかりやすく、確実に自分自身の評価につながります。
栄養士は1人職場が多く、仕事の内容を改善したり、評価したりする機会が少ないためか、分析・評価の意識が低い現状があります。
この意識は急に身に付くものではなく、日々の積み重ねが大切になります。
自分の仕事の評価のため、またスキルアップのために、これらの意識を常に持つことが大切ですね。
コミュニケーションスキルUPで仕事の質が変わる
「コミュニケーションスキル」は、様々な対象を相手に栄養相談を行う管理栄養士にとって必須の能力です。
多職種と仕事を行う現場が多いという特性もあり、様々な場面でコミュニケーションスキルが大切になります。
栄養相談した対象者の結果が変わらない、多職種との仕事がうまくいかない原因は、コミュニケーションがうまくいっていないことが原因ということが多くあります。
専門職はどうしても自分の知識や経験を強く押しつけすぎてしまい、コミュニケーションが一方的になってしまいがちです。
一方的なコミュニケーションは、人間関係のトラブルや栄養相談する対象者との信頼性の構築ができないなど、悪影響を引き起こしてしまいます。
このような状況を続けていると、仕事の質も自分の評価も下がってしまうことは間違いありません。
コミュニケーションスキルで大切なことは「人の話を聴く力」です。
どんな相手でもまず時間をかけてしっかり話しを聞くことで、心を開き、信頼関係を築くことができます。
その後相手の話しを尊重しつつ、自分の意見を伝えていきます。
忙しい中で、時間をかけて人の話を聞くことは、遠回りに感じますが、最終的にはしっかり結果に結びつくことにつながるのです。
栄養相談や人間関係がうまくいかなくて悩んだら、自分のコミュニケーションスキルを見直してみましょう。
情報通信技術(ICT)を操ることが成功のカギ
管理栄養士の仕事も確実に、ICTの知識やスキルは必須となってきています。
ICTとは簡単に言うと「Information and Communication Technology」(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の略で、意味は「情報通信技術」です。
身近な例で説明すると、SNS上でのやり取りやメールでのコミュニケーションも該当します。ネット通販やチャット等、人同士のコミュニケーションを手助けする事もICTの活用事例に該当します。(引用:https://www.job-terminal.com/features/ICT/)
日々進歩する情報通信技術(ICT)は、時代の鏡です。
コロナ禍でオンラインの会議や講座が増えたように、その時に必要なことがすぐに反映され、どんどん変化していきます。
例えば、管理栄養士が活躍するフィールドとして需要が上がっている「特定保健指導」では、今までは主として、「対面の初回面談」「電話の経過面談」が取り入れられてきました。
しかし、感染症対策として対面の面談が難しいことがあり、現在は「オンラインの面談」「アプリによる経過フォロー」「面談記録のシステム化」などが進んでいます。
仕事の応募資格には、「Word・Excelの使用ができる」「Power Pointを扱ったことがある」「インターネットの環境が整っている」などの要件が入っていることがほとんどです。
どんな仕事でも、パソコンやスマートフォンの使用が必須になってきているのです。
ICTに苦手意識を持たず、扱うことができることは、管理栄養士として活躍するフィールドを確実に広げることにつながります。
積極的にICTに触れ、新しいことにチャレンジしていきましょう。
+αのスキルアップに必要な情報や資格の選び方とは?
スキルアップにつながる力は、個人のキャリアプランによって様々です。
食に関する情報や資格はあふれ、やみくもに手を付けても時間とお金の無駄になってしまいます。
ここでは、管理栄養士が確実にスキルアップするための+αの情報や資格について、いくつかご紹介します。
管理栄養士の分野を本気で極めるなら「公益財団法人 日本栄養士会」をチェック
「公益財団法人日本栄養士会」とは、管理栄養士・栄養士により組織された職能団体です。
都道府県栄養士会と連携・協力して、栄養士・管理栄養士に関わるさまざまな事業を行っています。
(公財)日本栄養士会で注目する事業は以下の通りです。
・有名講師による最新情報が得られる「研修会」の実施
・管理栄養士・栄養士のスキル向上と専門職としての能力の習熟を目的とした「生涯学習制度」と「認定制度」
「認定管理栄養士・認定栄養士」は、自身の経験をもとに専門分野をより深め、その分野のエキスパートとして責任もった仕事ができるということを認定するものです。
(公財)日本栄養士会の認定は、自分のキャリアとして職場に胸を張って伝えられるだけでなく、自分の自信となることも間違いありません。
その代わり、認定資格をとるには、時間をしっかりかけて単位を履修する必要があり、費用も発生します。
本気で専門分野のキャリアアップを目指すなら、間違えの無い最新情報と専門分野としての認定の重みがある「(公財)日本栄養士会」の研修や資格取得を考えるのも1つの方法です。
仕事の関わりの中で他職種を理解し、知識の幅を広げる資格
「他職種の方との連携を円滑にするために、関連する勉強をしたい」というときには、通信教育などで学べる民間の資格取得講座がお勧めです。
短期間で、要点を効率よく理解できるテキストや動画などが用意されているため、仕事をしながらでも無理なく受講することが可能です。
例えば、管理栄養士として介護施設で働く中で、介護士、ケアマネージャーの勉強をして理解を深めることで、職場での円滑な栄養管理に活かしたい、などが考えられます。
ただし、資格取得は安易にできる半面、実際にその資格を仕事に活かすためには、さらに自分自身で勉強をしていく必要があります。
管理栄養士の仕事の幅や考え方を広げたいときに、関連する多職種の仕事内容を広く浅く勉強するには、とても有効な方法です。
勉強に費やせる時間や費用をよく考え、自分にあった講座を探してみましょう。
これから必要な「+αのスキル」はコレ!
管理栄養士としてさらに幅広く活躍するためには、管理栄養士としての知識を深めるだけでは足りないのが現状です。
今の時代に他者との差をつけるためには、管理栄養士が仕事をするうえでどんな分野でも求められる+αのスキルが必要になります。
+αのスキルは、自分の仕事をするうえでの強みとなり、個性にもなります。
自分のキャリアプランをしっかりと考え、あなただけに必要な+αのスキルを手に入れましょう。
ここでは同じ分野で働く管理栄養士と差をつけ、より仕事の効率や内容を充実させるためのスキルをいくつかご紹介します。
パソコンスキルで他者と差をつける
パソコンスキルは、色々なことができるに越したことはありませんが、Word・Excel・Power Pointなどを使ったことがある、というのは最低限の技術になります。
仕事の報告書や栄養管理に必要な計算、様々な指導媒体を作成するにも、パソコンを利用することで、以下のような目に見えた効率化を計ることができます。
・栄養計算の迅速化
・ミスがなくなる
・献立のデータベース化
・ペーパーレス化
ほとんどの職場で導入されている様々な栄養計算ソフトは、作業が簡単にできるようになっているので、それほど恐れる必要はありません。
しかし、基本的なパソコンスキルがないと、慣れるまでに時間がかかったり、十分な機能が使いこなせない可能性があります。
パソコンは苦手意識が高い方も多く、きっかけがないと頑張る気持ちになれないという声も多く聞きます。
得意な方から教えてもらったり、教室に通うなど、しっかり時間を取って学んでも損にはなりません。
自分には関係のない分野とは思わず、チャレンジして取り組んでみましょう。
急成長!SNSやオンラインの知識は新しい仕事を生み出す
コロナ禍で格段に需要が伸びたのが、オンラインを利用した講座や教室の実施です。
おうち時間が多くなり、料理や食のオンライン教室の需要がとても増えています。
今後、独立して個人事業主としてお仕事をしたいと考えている方は、SNSやオンラインを利用したビジネススキルは、できるだけ早く取得しておくことをお勧めします。
これらのスキルは本などでも学ぶことができますが、本と現実は意外と異なり、難しい用語などに翻弄されてつまずきがちです。
このような時は、自分自身もオンラインを利用して、これらのスキルの講座を受けるのが近道です。
SNSなどを検索してると、オンラインビジネスの講座が多く出回っています。
できれば、栄養士・管理栄養士のビジネスモデルに精通した方の講座のほうが、自分のその後のお仕事にもつながっていくことがあります。
例えば、料理を軸に独立してお仕事がしたいという方には、わたしも卒業した㈱アイナロハの「ファミリーバランスサポーター認定講座」がおすすめです。
自分のライフスタイルに合わせた働き方やビジネスモデル・料理を軸にした仕事の進め方をオンラインで学ぶことができます。
▼ファミリーバランスサポーターの講座はこちらをどうぞ▼
独立したい、個人事業主として活躍したいという方は、SNSやオンラインの技術に積極的にチャレンジしてみましょう。
経営・コスト管理は必須の技術
今どんな職場でもとても求められているのは、「経営・コスト管理」のスキルです。
そこで注目されるのが「栄養経営士」という資格です。
栄養経営士は、一般社団法人日本栄養経営実践協会が認定する資格です。
この資格を持つことで、「栄養管理の経営」を担う専門職として、栄養管理だけでなく、経営やマネジメントに対しても専門的な知識を持って仕事に取り組むことができます。
職場の中で、他業種との連携役を担うことが期待される資格です。
例えば、この資格は病院で働く場面で、次のように活かされます。
・栄養部門の有用性を、多職種に数値化したデータをもとにアプローチする
・データを根拠に、部門の拡大や予算の確保を行う
・栄養部門の信頼性や存在感が増す
・病院内での多職種との協同体制が構築される
このように、栄養経営士のスキルは、職場内での仕事の幅や内容を充実させることができるのです。
チーム経営について、様々な視点で見ることができるスキルのため、病院や施設で栄養管理チームを組んでお仕事をされる方には得にお勧めの資格になります。
「経営・コスト管理」を極めて、今より一歩進んだお仕事を目指してみましょう。
まとめ
管理栄養士がスキルアップをするためには、栄養学についての最新情報に対して常にアンテナを張り、正しい情報を入手する努力が最低限必要になります。
ただし、管理栄養士として他者と差をつけたい、仕事の幅を広げたい、と考えているときには、自分だけの強みとなる+αのスキルを身に着けることが重要です。
+αのスキルは、「特定の分野をさらに極めて精通すること」「関連する資格をとること」「時代の波を肌で感じ、新しいビジネスモデルのスキルを身に着けること」など様々な方法があります。
まずは今の自分をしっかり見つめ、今後どのような仕事がしたいのか、成長したいのかを考えてみましょう。
そして、さらに羽ばたくための自分だけの「強み」となるスキルをぜひ身につけ、生き生きと活躍する未来を手に入れてください。