中学生は、身体も心もぐんと成長する時期。
それに加えて、学校の勉強とハードな部活の練習を毎日頑張っているお子さんもたくさんいます。
そして、そんなお子さんのために、スタミナがつく食事を作って応援したいと思っているお母さんも多いのではないでしょうか。
普段の練習や大切な試合で力が発揮できるよう、ぜひお子さんと一緒に読んでいただければと思います。
スタミナをつける食事
スタミナをつける食事とは、どのようなものでしょうか。
食事を作る立場からすると、とても気になるところですね。
ここでは、スポーツ選手の食事を通してご紹介します。
スポーツ選手は、特別な食事をしているの?
お子さんには、憧れのスポーツ選手がいますか?
身体が資本のスポーツ選手には、食事管理を専門の栄養士に依頼している方もたくさんいます。
彼らは、普段どのような食事をしているのでしょうか。
何か特別なものを食べているのでしょうか。
答えは、「いいえ」です。
国際オリンピック委員会(IOC)のスポーツ栄養に関する合意声明では、
「普通に入手できる多くの種類の食べ物から適切なエネルギーを補給していれば、トレーニングや競技に必要な糖質(炭水化物)・たんぱく質・脂質、そして微量栄養素の必要量をとることができる。正しい食事はスポーツ選手が適切な体重や身体組成を獲得し、それぞれの競技で大きな成功を収めるのに役立つであろう。」参照: スポーツ栄養に関するIOCの合意声明2010
と、明言しています。
つまり、私たちが普段食べているものと同じ食材で、選手としての身体づくりをすることができるのです。
トレーニングや競技に必要な5つのポイント
トレーニングや競技に必要な5つのポイントとは、上記の合意声明にもある、糖質、たんぱく質、脂質、微量栄養素(ビタミン、ミネラル)のことです。
この5つのポイントをそろえることで、栄養のバランスも整えることができます。
①糖質
脳や身体を動かす、主となるエネルギー源になります。
主食となる、ご飯、パン、麺類などの他、芋類、バナナ、りんご、みかんなどの果物に多く含まれます。
②たんぱく質
筋肉、内臓、髪、爪など体をつくる成分です。
ホルモンや酵素、免疫細胞もつくります。
肉、魚、卵、豆、乳製品に多く含まれています。
③脂質
効率のよいエネルギー源となります。
細胞膜、臓器、神経などの構成成分となる、ビタミンの運搬を助けるなどの働きがあります。
ホルモンの分泌や調整をする機能もあります。
植物油、バターなどの他、青魚、乳製品、種実類、アボカドに多く含まれています。
④ビタミン(ビタミンA、B、C、D、Eなど)
エネルギーにはなりませんが、他の栄養素が体内でうまく働く手伝いをします。
体内ではほとんど合成ができないため、食べ物から摂ることが必要です。
水溶性と脂溶性に分けられ、性質、代謝、体への取り込まれ方などに違いがあります。
野菜に多く含まれますが、種類によっては、肉や魚などにも多く含まれています。
⑤ミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、カリウム、リンなど)
骨や歯を形成する、筋肉や神経の伝達をよくする、細胞の働きをスムーズにするなど、私たちの身体の臓器や組織の働きをよくします。
海藻、種実類、乳製品などに多く含まれています。
栄養素は、身体の中で単体で働いているのではなく、たくさんの栄養素がお互いに関わりあっています。
そして、その結果により、筋肉や血液などを作ったり、身体の機能を調節しているのです。
これは食べてはいけない、これさえ食べれば大丈夫というものもありません。
スポーツをしているかどうかに関わらず、摂りすぎても、不足しても体調を崩すことがあります。
そのため、様々な食品をバランスよく食べることが大切です。
運動をしている中学生の食事量はどのくらい?
実際にどれくらいの量を食べればよいのかは、栄養素ではなく、料理の区分で考えると分かりやすくなります。
厚生労働省が策定した「食事バランスガイド」によると、食事の内容は「5つの料理」に分けることができます。
・主食…ご飯、パン、麺など
・主菜…魚・肉・卵・大豆・大豆製品を主材料とする料理
・副菜…副菜は野菜・いも・海藻・きのこを主材料とする料理
・牛乳・乳製品
・果物
スポーツをしている中学生の場合、1食の目安は下記のようになります。
<スポーツをしている中学生の1食の食事量の例>
主食…ご飯200g
副菜…汁物や野菜の小鉢 2皿 もしくは、野菜炒めや煮物 1皿
主菜…肉や魚料理 1皿
牛乳・乳製品…牛乳1本
果物…りんご半分
このように、5つの料理及び分量を揃えることで、栄養のバランスがよくなります。
参照: 厚生労働省 「食事バランスガイド(基本編)」 「食事バランスガイド」の適量と料理区分」
中学生が意識して摂りたい栄養素
栄養のバランスを整えることが基本ですが、中学生の場合は、成長期真っ只中であることも考えなくてはいけません。
成長期は運動で消費する分だけでなく、骨や筋肉などを作るために必要な栄養素量が増えます。
特に、カルシウムと鉄は不足しやすいため、意識して摂りましょう。
他の栄養素と合わせることで、効率よく摂ることができます。
カルシウム
カルシウムは、骨や歯の材料となる他、ホルモンや神経系の分泌や筋肉の収縮にも使われます。
成長期にカルシウム蓄積量が最大となるため、中学生の一日のカルシウム推奨量は、男子1,000mg、女子800mgとされています。
下記のように小魚、乳製品、豆製品、青菜などに多く含まれます。
<食事からとるカルシウムの量の例>
牛乳コップ1杯(200mg)…220mg
ししゃも3尾(45g)…160mg
木綿豆腐約1/2丁(150g)…140mg
小松菜1/4束(70g)…120mg
カルシウムは、ビタミンDやマグネシウムと一緒に摂るのがおすすめです。
・ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けます。
魚介類、卵、きのこ類に多く含まれています。
・マグネシウム
骨の主成分はカルシウムですが、マグネシウムも骨の強度を保つ働きをしています。
カルシウムとのバランスが大切なので、マグネシウムが不足しないようにすることも大切です。
反対に、過剰のリンは、体内に入ったカルシウムを排泄してしまいます。
スナック菓子、冷凍食品、加工食品といった子どもがよく好むものには、リンが過剰に含まれているため、食べすぎには注意しましょう。
鉄
鉄は、体の中の酸素を運んだり、筋肉から酸素を受け取る役割があります。
鉄も成長期における推奨量が高く、男子10㎎、女子8.5mg~12㎎となっています。
鉄には2種類あり、吸収率が異なります。
・ヘム鉄
ヘム鉄は、レバー・赤身の豚肉・牛肉・あさりなど動物性たんぱく質に多く含まれており、吸収率がよい鉄です。
豚レバー(60g)…7.8㎎
牛もも肉・脂身つき(80g)…2.0㎎
あさり・生(30g)…1.2㎎
・非ヘム鉄
非ヘム鉄は、ひじき・ほうれん草などの植物性食品や卵に含まれています。
ヘム鉄に比べると吸収率が低いため、他の食材と合わせて食べ、効率よく摂る必要があります。
鶏卵1個(60g)…0.9㎎
乾燥ひじき・ステンレス釜(5g)…0.3㎎
ほうれん草1/4束(70g)…1.4㎎
厚揚げ中1/2枚(70g)…1.8㎎
鉄の吸収を高めてくれる成分は、3つあります。
<鉄の吸収を高める成分3つ>
・動物性たんぱく質
・ビタミンC(野菜や果物に含まれる)
・カゼインホスホペプチド(乳製品のたんぱく質が分解され作られたもの)
これらを含む食品と合わせて料理を作ることで、効率よく鉄を吸収することができます。
栄養価引用:日本食品標準成分表(八訂)
中学生あるある!?こんな生活には注意しよう
中学生になると、自分で食べるものを選ぶ機会が増えます。
親が口を出すことも減るかもしれませんが、このような生活は注意が必要です。
朝ごはんを食べない
1食抜くと、その分の栄養が不足してしまいます。
特に朝練がある場合には、身体を動かすエネルギーも集中力もなくなってしまいます。
朝ごはんには体内時計を整え、身体を目覚めさせるスイッチを入れる働きがあるので、必ず食べるようにしましょう。
清涼飲料水、甘いお菓子を好む
清涼飲料水やお菓子には、見た目以上に砂糖が使われているため、気づかないうちに砂糖の過剰摂取につながります。
砂糖の摂りすぎは、身体の中のビタミンやミネラルを消費してしまい、疲れやすい身体になってしまうので注意しましょう。
練習時以外の水分補給は水やお茶などにし、お菓子は心の栄養として、食事に影響がないようにしましょう。
お腹が空いたときの間食は「補食」と考え、おにぎりや果物、乳製品など食事に近いものを選ぶとよいでしょう。
コンビニ弁当をよく食べる
家で食事を作ることができない時など、コンビニは何かと便利な存在ですね。
しかし、コンビニで売っている弁当はビタミンやミネラルが少なく、脂質が多いものがほとんどです。
コンビニを利用するときには、弁当に野菜ジュース、果物などを足したり、おにぎり、チキン、サラダなどを組み合わせるとよいでしょう。
水代わりに牛乳を飲む
身体を大きくしたいからと、毎日大量の牛乳を飲んでいるという子の話も聞きます。
しかし、牛乳を飲むだけで身長が高くなるわけではありません。
身長が高くなるにはカルシウム、たんぱく質、ミネラル類やビタミン類など適切な栄養素が不可欠になります。
また、遺伝やホルモン、運動も大きく関与しています。
牛乳・乳製品には、カルシウム、たんぱく質、ビタミン類が豊富ですが、飲み過ぎは脂質の摂り過ぎになってしまいます。
牛乳を飲む量は、1日400mlを目安にし、栄養バランスのよい食事や睡眠も大切にしましょう。
参照:一般社団法人日本乳業協会
まとめ
子どもたちが、目標に向かって毎日練習しているのと同じように、身体づくりも毎日の食事の積み重ねでできています。
「好きだから」という一時的な感情や、「これを食べれば…」という浅い知識で食べてしまうと、成長と運動に必要な栄養をとることができません。
しかし、中学生は、親の言葉を素直に聞き入れてくれない時期でもありますね。
小学6年生の私の息子も、親の言うことにすぐ反発するようになりました。会話にならないこともよくあります。
「これを食べなさい!」や「こうしなきゃダメ!」というような伝え方では、聞く耳を全く持ってくれません。
毎日の練習や、勉強との両立を頑張っていることを労いつつ、親として、食事を通して応援していることを少しずつ伝えましょう。
このコラムも、印刷して、そっと机の上に置いておいたら読んでくれるかもしれません。
また、親の話は聞いてくれなくても、スポーツ選手や専門家の話なら聞いてくれることもあります。
子どもや保護者向けに、スポーツ栄養のオンライン講座、DVD貸出、動画配信などを行っている企業もありますので、活用してみてはいかがでしょうか
そして、忘れてはいけないのが、食事の時間をリラックスできる場にすることです。
健康のため、身体づくりのためと言っても、食事が負担になってしまっては、練習へのモチベーションも上がりません。
食事を楽しみながら、子ども自身が「食べよう」という気持ちを持てるよう応援してあげられるといいですね。